カテゴリ:泌尿器編

泌尿器編<猫の膀胱炎が再発する原因と対策!飼い主が知っておきたいこと>

2024/12/10

はじめに

「また膀胱炎?」「治ったと思ったのに…」
猫の膀胱炎が繰り返されると、飼い主さんは不安に感じることも多いでしょう。
膀胱炎が再発する背景にはさまざまな原因が隠れています。
本コラムでは、膀胱炎が繰り返される3つの主な原因と、適切な検査、そして飼い主さんができる再発防止策について解説します。


1. 猫の膀胱炎が再発する3つの主な原因

1️⃣ 特発性膀胱炎(FIC:Feline Idiopathic Cystitis)
猫の膀胱炎の再発原因として最も多いのが「特発性膀胱炎」です。
特発性膀胱炎とは、細菌感染や結石が確認されず、一般的な検査では原因が特定できない膀胱炎のことです。このタイプの膀胱炎は、猫の下部尿路疾患の6~7割を占めるといわれています。

ストレスが主な要因
特発性膀胱炎の大きな引き金はストレスです。

  • 環境の変化(引っ越し、家具の配置変更)
  • 多頭飼育によるストレス
  • トイレの配置や清潔さの問題

環境の改善やストレスの軽減が再発防止の鍵となります。


2️⃣ 尿石症
膀胱内に存在する結石が物理的に膀胱壁を刺激し、炎症を引き起こします。この状態が膀胱炎の原因となり、繰り返しやすいのが特徴です。
結石の種類や発生場所(膀胱、腎臓)によって治療法が異なるため、診断が重要です。


3️⃣ 尿路感染症
高齢猫や免疫力が低下している猫では、細菌感染が続発する場合があります。これが膀胱炎を引き起こし、再発の原因となることがあります。
尿路感染症の診断と治療には、尿検査や細菌培養検査が役立ちます。


補足:基礎疾患や腫瘍の可能性

膀胱炎が繰り返される場合、以下のような背景要因を確認することも重要です:

  • 基礎疾患(糖尿病、甲状腺機能亢進症など)
    これらの疾患は膀胱炎の直接原因となることは少ないものの、尿中の代謝異常や免疫力低下がリスクを高める場合があります。

  • 腫瘍
    まれに膀胱内の腫瘍が膀胱炎の原因となることがあります。特に繰り返しやすい場合には検査が必要です。


2. 再発を防ぐための検査の重要性

膀胱炎が繰り返される場合、その背景にある原因を特定するために動物病院で以下の検査が行われます:

1️⃣ 尿検査
尿検査は膀胱炎の診断で最も基本的な検査です。以下の項目を確認します:

  • 赤血球・白血球:炎症や感染の有無を確認します。
  • 尿タンパク:腎臓や尿路の異常を反映します。
  • 尿の酸性度(pH):結石の形成リスクを評価します。
  • 結晶の有無:尿中に結晶が見られる場合、尿石症の可能性を示唆します。

2️⃣ レントゲン検査
レントゲン検査では、結石の存在や大きさ、位置を確認します。以下の点が重要です:

  • レントゲンに写る結石には、ストルバイト結石、シュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石などがあります。
  • 写らない結石には、尿酸アンモニウム結石、シスチン結石、キサンチン結石があります。
  • 小さい砂粒上の結石は検出が難しい場合があるため、他の検査との併用が必要です。

3️⃣ 超音波検査
超音波検査は、レントゲンでは写らない結石やその他の異常を確認するのに役立ちます。

  • 結石・沈殿物・浮遊物の有無を確認します。
  • 膀胱壁:肥厚の有無や腫瘍の疑いがあるかどうかを評価します。
  • 腎臓や尿管、近位尿道(膀胱が尾側に偏移していなければ)も含めた広範囲の評価が可能です。

4️⃣ 血液検査
血液検査では、膀胱炎の背景にある基礎疾患や全身の健康状態を確認します。

  • 糖尿病や甲状腺機能亢進症などの有無を評価します。
  • 腎臓や肝臓の機能、全身の炎症状態もチェックします。

5️⃣ 細菌培養検査
膀胱炎の原因が細菌感染の場合、細菌培養検査で感染している菌を特定します。

  • 適切な抗菌薬を選択するための情報を提供します。

3. 再発防止のために飼い主ができること

1. 水分補給を促す

  • 十分な水分摂取は、尿を薄めて膀胱炎の予防に役立ちます。
  • 猫用ウォーターファウンテンを利用する、ウェットフードを与えるなど工夫しましょう。

2. ストレスを軽減する

  • 猫がリラックスできる環境を整えることが大切です。
  • 多頭飼育の場合、個別の食事スペースやトイレを用意すると効果的です。
  • もし特発性膀胱炎と診断されているのであれば、この「ストレス軽減」が治療に最重要です

3. トイレ環境を整える

  • トイレの清潔さを保ち、適切な配置を心がけましょう。
  • トイレの数は「猫の頭数+1」が理想です。

4. 尿路ケア用フードを検討する

  • 結石予防や膀胱炎の再発防止に役立つフードがあります。獣医師に相談して最適な食事を選びましょう。

まとめ

猫の膀胱炎が再発する背景には、特発性膀胱炎、尿石症、尿路感染症が主な原因として挙げられます。基礎疾患や腫瘍などが関与する場合もあるため、適切な検査と診断が重要です。
再発を防ぐには、飼い主さんによる環境改善と日常的なケアも欠かせません。

当院では、猫の膀胱炎の診断や治療、再発防止のアドバイスを行っています。
「また膀胱炎かも?」と思ったら、ぜひお気軽にご相談ください!




南大和どうぶつ病院は犬猫を対象とした動物病院です。
病院は神奈川県大和市の小田急江ノ島線高座渋谷駅から徒歩7分にあります。
綾瀬市、藤沢市、横浜市からのアクセスも良好で、駐車場を4台完備しています。
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