循環器編3<イヌのフィラリア症(犬糸状虫症) 治療編>

2021/05/30
前回イヌのフィラリア症の概略・予防について書いてみました。
今回はその続きで治療について触れてみたいと思います。


イヌのフィラリア症の予防は簡単ですが、治療はとても大変な病気です。
進行した重度の症例では治療が功を奏さず、予後が悪いこともあります。

*治療方法

大きく分けて以下の3通りの方法に分けられます。

 1 ヒ素剤の注射による虫体の殺滅
 2 手術による虫体の摘出
 3 フィラリア虫体の寿命を待つ

順番にそれぞれ解説していきますね。




【1 ヒ素剤の注射による虫体の殺滅】

 メラルソミンというヒ素剤を2~3回筋肉注射しフィラアリア成虫を駆除する方法です。
 米国犬糸状虫学会(American Heartwarm Society:AHS)推奨の治療法ですが、大量のフィラリア虫体が寄生している場合には、虫体が一度に死滅することでアナフィラキシーショックや呼吸不全を起こす可能性があるため、適応外となります。
 注射前に抗アレルギー薬のステロイド剤を前投与し、腰背筋にメラルソミンを筋肉注射します。痛みを伴うことがあり、筋肉外に注射剤が漏れると周囲組織が壊死することがあります。
 死滅した虫体は肺動脈の末端で詰まり、一時的に肺機能を低下させるため、注射後1~2週間は絶対安静が必要です。
 現在日本ではメラルソミン注射剤の生産がなく、海外から薬の輸入が必要になります。


【2 手術による虫体の摘出】

 右心室内に虫体が寄生している場合に適応となる方法です。
 頚静脈からアリゲーター鉗子と呼ばれる器具を挿入し、右心室内のフィラリア虫体を掴み取って除去する方法です。全身麻酔のリスクや手技の困難さがあります。
 現在日本ではアリゲーター鉗子の製造は終了しており、現存するものを滅菌して使用するしかありません。

【3 ドキシサイクリン+イベルメクチンを用いてフィラリア虫体の寿命を待つ】
 現在日本でよく用いられているマイルドな治療法で、ミクロフィラリアの駆虫薬であるイベルメクチンなどと、抗生剤のドキシサイクリンを併用し、フィラリア虫体の寿命短縮を狙う治療法になります。
 ドキシサイクリンにはフィラリアの共生細菌であるボルバキアを除去する効果があり、それにより栄養を得られなくなったフィラリア虫体の寿命を縮めることができます。
 但し、治療期間が年単位と長期に渡ることもあり、その間に肺障害が進行し、肺高血圧が悪化する可能性があります。


 以上のようにイヌのフィラリア症の治療には大きな負担やリスクを伴います。出来ればこういった治療は避けてあげたいですね。

フィラリア症予防は飼主様の責任です。

しっかりと予防すればほぼ100%防げる病気なので、うちの子は家から出ないから・・・、うちの周りに蚊は少ないから・・・などと油断せずに、必ず予防してあげるようにしましょう。おいしい予防薬もありますので、月イチのご褒美感覚であげてください。

 ちなみに、ここまでずっと【イヌの】フィラリア症と書いてきましたが、ネコには感染しないのか?というと、、、
 答えはノーです。
 非常にまれにですが感染することがあります。ただし、イヌとネコでは病態が違い、感染してしまうと咳や呼吸困難などが主な症状ですが、アレルギー症状が強く出るため、1~2匹の感染でも命にかかわることがあります。
また、ネコでは上記のような治療は適応されず、現状予防しか有効な手段がありません。気になる方はフィラリアの予防薬(滴下タイプのみ)を使用しましょう。
当院にもネコ用の予防薬がありますので、気軽にご相談ください。

コラム担当:下山
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